ミニマリズムの進化形?! オプティマイザー思考とは

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ネモ・ロバーツ

写真家&ライター&日常系ミニマリスト。 広告制作・編集と撮影の仕事を経て渡英。ロンドンをベースにアーティスト活動を行う。 『レス・イズ・モア 夢見るミニマリストでいこう。』『ロンドンでしたい100のこと』(共著)を出版。 ロンドンを拠点に展覧会もやっています。


不要なものを手放し身軽に生きるミニマリストたち。

そうじ術や片付けブーム、やましたひでこ氏の断捨離など、

シンプル&快適に暮らす生活がトレンドになってかなり経ちましたが、

最近注目を浴びているのは「オプティマイザー思考」。

 

ミニマリスト関連のトピック好きが高じて、

世界のミニマリズム・ムーブメント本を書いてしまった筆者が、

この新コンセプトについて紹介します。

 

オプティマイザー思考って何?

コンピュータやスマホを使っていると時々目にする

「最適化(=オプティマイズ)」という単語。

これはデバイス動作が重い時の対処法として、

散らかってしまったデスクを片付ける感覚で

メモリを整理・解放するなどし、プログラムがサクサクと快適に動くように

することを指しています。

 

使ったまま起動しっぱなしのアプリを閉じたり、

いらないファイルを消去することでデバイスに余裕ができ、

動作が速くなるというのは誰しも経験があるのではないでしょうか。

 

このオプティマイズ作業を日常に生活に取り入れている人がオプティマイザー。

つまりオプティマイザー思考を使って生活を「最適化」している人になります。

環境を最適化するには、自分の作業の見直し、

そして持ち物や時間の無駄を省き、睡眠・食事・運動に気を使い

自分のコンディションを整えることなどが含まれます。

 

オプティマイザーのメリットは?

オプティマイザー思考では自分が快適に動きやすい環境作りを重視します。

エネルギー浪費を減らし集中環境をつくるため、

仕事や家事、勉強の能率が上がったり、気持と時間の余裕が生まれます。

その結果として、

  • 健康になる
  • 新しいアイデアが生まれる
  • 好きなことに使える時間やお金が増える
  • 楽しく生きられる

といった、さらなるメリットも生まれていきます。

 

自分にとって何が最適なのかを意識するので、

自分軸を取り戻して周りの意見にまどわされない健全なメンタル状態を

保つことができるのも大きなボーナスです。

 

ミニマリストとの違いは?

無駄を省いて環境を整え時間と心の余裕を作っていくという意味では、

ミニマリストとオプティマイザーはほぼ一緒です。

しかし細かい点でお互いのポリシーは異なります。

 

本当に必要なものを見極めて大切にしたいと思うのが

ミニマリストの基本姿勢で、

不要物はすみやかに処分してしまうことが多いですが、

オプティマイザーの場合は

「効率性や生産性が落ちる場合=自分の動作を重くしてしまう」

場合のみ処分というアクションを取ります。

 

例を挙げてみましょう。

例①着ない服がある

ミニマリストの場合:

余白空間を大切にし、スペースの解放と美的観点から手放してしまうことが多い。

お気に入りでよく着るものだけを手元に残す。

 

オプティマイザーの場合:

「その服が邪魔になってお気に入りの服に手が届かない」など、

自分にデメリットがある場合のみ処分する。

スペースに余裕があり、特に気にならないのであれば

処分に無駄なエネルギーを使わないことも多い。

つまり、

  • 快適さ・美的ポリシーを損なうから捨てる=ミニマリスト
  • 効率・生産性を損なうから捨てる=オプティマイザー

という傾向があるのです。

 

自分的ベスト・ライフを見つける

またオプティマイザーは「あると便利だな」というアイテムを増やすことには積極的です。

例②作業中にまわりの雑音が気になる

ミニマリストの場合:

「無駄に増やしたくない。雑音の方を減らせないか。

今ある物でなんとかできないか」など、

モノを増やさないことをまず意識し、事前によく検討してから購入。

 

オプティマイザーの場合:

ノイズキャンセリング機能付きイヤホンを買う。

手に入れてみてそれが不要であると分かったら、そのときに考える。

 

ちなみにミニマリストは「モノを極限まで排除する人」

という先入観を持たれる場合がありますが、

快適さを追求した結果、自分にとって必要ないアイテムを

持たないようにしているだけで「洗濯機も冷蔵庫もなにもありません」

といった修行僧のような生活をしているタイプはごくまれです。

 

両者とも、スマホや家電など自分の生活に役立つアイテムを活用したり、

好きなことに時間やお金などのリソースを注ぐことには積極的。

つまり「ミニマリストはもう古い、これからはオプティマイザーの時代」

という訳ではなく、その人の性格や目的、好みの違いによって

取捨選択の基準が分かれるということです。

 

またどちらのタイプにせよ「捨てること」よりも、

最適化やミニマルを目指すことで生まれるさまざまな要素の方が重要になります。

それは時間や心の余裕だったり、家族との時間、

美しい空間や趣味の充実だったりと人ぞれぞれ。

自分が「いちばん増やしたいのは何か」をまず知ることで、

世間の常識にとらわれない、自分らしい幸せの形が見えてくるのでは

ないでしょうか。

 

脱・スタフォケーション

英国のジャーナリスト、ジェームズ・ウォールマン氏は

著作で「Stuffocation(スタフォケーション)」という造語を生み出し

話題になりました。

これは「Stuff=モノ」と「Suffocation=窒息」を掛け合わせた言葉。

 

幸せになるためにモノを手に入れる→その生活維持のために働き続ける→

もっと幸せになるために新しいモノを手に入れる→

生活維持のためにさらに働き続ける…

という回し車に乗ったハムスターのようなライフスタイルのことです。

 

またハーバード大学のセンディル・ムッライナタン教授は

「何かが足りない」という無意識の思いが脳の処理能力を低下させ、

近視眼的行動を生んでしまうと説いています。

いずれもモノに対する心理をメインに扱った本ですが、

時間や仕事、趣味、健康などでも同じことが起こります。

 

効率や生産性を上げても、それで回し車のスピードが

さらに上がってしまうのでは意味がない。

オプティマイズによって生まれた余裕を、

自分のために使うことを忘れないことがポイントです。

 

とはいえ「脱・スタフォケーション」に憧れても、

実際にはなかなか難しいもの。

私たちは広告やパッケージに知らず知らずのうちに

影響され行動していることが多いのです。

 

消費行動学のエキスパート、ブライアン・ワンシンクの著作

そのひとクチが、ブタのもと(原題:Mindless Eating)」

という本があります。

邦題はダイエット本のような印象ですが、

私たちが「必要」以外にも広告やパッケージデザイン、

生活習慣など様々な要素に影響を受け消費活動を

コントロールされていること気付かせてくれるユニークな本です。

 

人生の「大事なこと」を思い出すチャンス

パンデミックの影響で外出制限を経験したりと、

私たちの多くが生活の変化を迫られました。

通勤や通学の不便から解放された人もいれば、

家事や仕事がしにくくなった人も。

自分の立場や性格によってそれぞれ違ったのではないでしょうか。

 

そして「なくなってむしろ楽になった」「なくても意外に大丈夫」

な事柄に気がついた人も多いはず。

がむしゃらに働いて、その分消費する「モア・イズ・ベター」の時代は終わり、

かしこく働き、人生を楽しむ「レス・イズ・モア」への移行期にある今。

様々な考え方を柔軟に取り入れて、生活のアップデートを計ってみては

いかがでしょうか。

 

<参考書籍>
Stuffocation: Living More with Less ジェームズ・ウォールマン著(日本語訳なし・2021年時点)

いつも「時間がない」あなたに:欠乏の行動経済学」センディル・ムッライナタン著

レス・イズ・モア 夢見るミニマリストでいこう』ネモ・ロバーツ著(拙著)
2007年から世界でひろがったミニマリズム・ムーブメントと「回し車ライフ」出口戦略のアイデアを紹介しています。

 

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