病気リスクを予測|手軽になったDTC遺伝子検査を受けてみました。

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ととろん堂

フリーライター 兼 現役大型バス運転士として東京下町を徘徊中


自分の遺伝子を、検査してみたことがある方はいますか?

お子さんをお持ちの女性でしたら、妊娠中に産科の先生から

「出生前診断(DNA検査を含む)をしますか?」と聞かれた方も多いかもしれません。

 

アメリカでは、2013年に女優アンジェリーナ・ジョリーが、

遺伝子検査で「生涯87%の確率で乳がんを発症するリスクがある」と判定され、

自ら予防的に乳房切除手術を受けたことが大きく報じられました。

 

現在、日本国内にはDTC遺伝子検査(*1)を行う事業者が700件以上もある

らしいのですが、筆者のまわりでは、特定の疾患と関わりなく

「遺伝子検査を受けた」という友人・知人にはまだ会ったことがありません。

 

このDTC遺伝子検査とは何なのか。

今回、筆者が実際に受けてみて分かったことを、感想もまじえてご紹介します。

そして、健康に気づかう40代以上の男女が受検してみる

メリットやデメリットは何か、という点についてもご説明します。

(*1)DTC=Direct to Consumer/経済産業省「平成27年度 製造基盤技術実態等調査 (遺伝子解析ビジネス等に関する調査事業) 報告書」より

 

DTC遺伝子検査とは

遺伝子は、人間の体をつくる設計図のようなもので、

その設計図が刷り込まれた細胞内物質がDNA(デオキキリボ核酸)です。

同じ哺乳類であるチンパンジーとヒトでは、

DNAの並び方(塩基配列)が98.8%同一。残り1.2%の配列の差異が、

チンパンジーとヒトとを隔てています。

 

一方、同じヒト同士の比較では、DNAは99%同じで、

「背が高い/低い」「目が青い/黒い」といった個性は、

1%の差異によって決まります。

 

遺伝子検査とは、この1%の差異に注目した検査で、

受検者の体質、遺伝性疾患などへのかかりやすさ(発症リスク)を、

過去の集積データと比較しながら統計的に解析する検査のことを指します。

 

遺伝子検査には、大きく分けて2つの種類があります。

1つは、医療機関で、特定疾患や症状に対して、

遺伝子の異常があるのではないかと推測した上で、

血液検査などにより解析を進める医療行為の一環です。

 

もう1つが、今回ご紹介するDTC遺伝子検査で、

医療行為とは関係なく、ウェブ/郵便で、体質などに関する評価を

サービス事業者へ依頼する方法です。

 

DTC遺伝子検査を受ける流れ・判定結果

今回筆者が受けてみたのは、2019年に日本進出した、

米デラウエア州の遺伝子分析スタートアップ「ジェノプラン」の検査キットです。

ジェノプラン遺伝子検査キット」(消費税、配送料別29,800円)

 

同様の検査キットには、

(株)DeNAライフサイエンスが運営する「MYCODEヘルスケア

(消費税別29,800円)

ダイエット関連の分析に特化して廉価な「DHCの遺伝子検査 ダイエット対策キット

(消費税別5,000円)

などがあります。

 

いずれのキットを申し込んでも、大まかな利用の仕方は同じで、

まずウェブなどを通じて申込、代金決済をすると、

検査用キットが郵送で送られてきます。

この検査キットに、検査の標本となる自分の唾液を規定量入れて、

返信用封筒で事業者に返送します。

それから待つこと2〜3週間、検査終了の通知がEメールなどで届きますので、

その本文指定のURLにアクセスし、アンケート回答を経て、

評価書を受領するという流れです。

(商品によっては、ペーパーで評価書が送られてくる場合もあるようです。)

 

ジェノプランのサイトからダウンロードした

筆者(アラフィフ、男性)の検査評価書は、表紙目次も含めて、

PDF208ページ分に及ぶ膨大なものでした。

 

その評価書は、冒頭に述べたように医学的な診断書ではありませんが、

個性を決める1%の遺伝子情報に基づいて、

統計的分析から500(*2)もの検査項目についてリスク高低を予測するものでした。

 

(*2)主な検査項目:

がん(乳がん、大腸がん、甲状腺がん、肺がんほか)

認知症と脳疾患(アルツハイマー病ほか)

栄養と代謝(ビタミン、ミネラル、DHAほか)

睡眠と健康(不眠症、睡眠時無呼吸症ほか)

ダイエット(基礎代謝、内臓脂肪、リバウンドほか)

スキンケア(肌の老化、脱毛ほか)

心血管疾患(高血圧、動脈硬化ほか)

基礎代謝疾患(糖尿病、肥満、肝硬変ほか)

たとえば、筆者の場合、既に他界した実母が長く糖尿病を患っていたことから、

糖尿病家系だと認識しておりますが、それが遺伝子の配列からも

裏付けられることとなりました。(2型糖尿病の発症リスクが標準の5倍。)

また、現に血圧が少し高めで、かかりつけ医から服薬指導を受けていますが、

高血圧のリスクも少し高い、という指摘を受けました。

一方、筆者の場合に全く当てはまらない指摘も複数ありました。

(不眠症のリスク高ほか。)

また、どういう根拠なのか、90歳まで生きながらえる可能性大、

という指摘も受けており、頭を抱えております。

(老後自己資金2,000万円ではぜんぜん足りない!?)

この「検査結果の当たりはずれ」という点に関して、

KDDI総合研究所のレポート『米国でブームを迎える

「一般消費者向け遺伝子検査サービス(DTC)」の現状と課題』

( https://rp.kddi-research.jp/article/RA2019002 )では、

「DTCの本領はエンターテインメント(血液型性格判定や星占いの類)」

とまで言い切っています。

(もちろん、現在日本国内で営業する事業者に対しては、

個人遺伝情報取扱協議会(CPIGI)が認定制度を設けて監視活動を行っています。)

 

やはり大きく「当たりはずれ」が出てしまう最大の要因は、

遺伝子情報の統計的な解析のみで、被検者誕生後の生活要因、

環境的要因を全く加味しない資料だから、という点にあると推測されます。

 

DTC遺伝子検査を受けるメリットとデメリット

受けてみて感じたDTC遺伝子検査の最大のメリットは、

「無意識のうちにしている生活習慣の見直し」という点にあります。

 

たとえば、自分は他の人(の遺伝子情報)とくらべて脂質、脂肪、

タンパク質などが代謝しやすい体質なのかどうか、という参考値から、

自分にとって効果があがりやすいダイエット法を選択する、

というようなことが考えられます。

 

また、仮にDTC遺伝子検査によって、重い病気に将来かかる高い危険性を

指摘された場合にも、その後に本格的な医学検査を受け直すことで、

予防、早期発見につながる可能性があります。

 

一方、考えられるデメリットとしては、大きく2つあります。

 

第1には、検査評価書には医学的なアドバイスは一切含まれません。

また、仮に採取した標本を検査する過程で何らかの病気が発見されたとしても、

検査機関は病院ではないので、罹患(りかん)の事実について

教えてくれることはありません。

 

この点に関しては、今後、DTC遺伝子検査の認知度、

受検率が高まり、本格的に事業者と医療機関との連携が整ってくると、

デメリットではなく大きなメリットに変わることだと考えられます。

 

つまり、遺伝子検査の結果に基づき医師からの生活習慣指導、

さらにはテーラーメイド医療への提案、というような分野にまで

応用できる可能性を秘めている検査手法ではあるのです。

 

もう1つのデメリットは、医療機関でないスタートアップ事業者に、

自分の遺伝子情報(個人情報)を渡す、ということです。

 

この事業を行う以上、各事業者は情報セキュリティに

細心の注意を払っているとは考えられます。

ただ、HealthCareLabというブランドで本事業を行っていた

Yahoo!ヘルスケア社は、2020年4月に事業を終了し、

データなどは、すべて協業先であった遺伝子検査大手

(株)ジーンクエスト社に移管されました。

 

自分の遺伝子情報は一生変わらないのに、

それを取扱う運営会社はたびたび入れ替わる、

ということが、今後も起こりうることが予想されます。

 

この点に関しては、DTC遺伝子検査の一層の普及と、

医療機関連携によるコンプライアンス強化を、被検者として強く希望します。

 

日本ではまだ普及期のサービスだが、試してみる価値あり!

アメリカでは、急速に普及が進むDTC遺伝子検査。

(日本と異なる多民族国家アメリカの事情としては、

遺伝子検査を通じて「自分のルーツ(祖先)の人種を知りたい、

というニーズもあるようです。)

 

それに比べ、日本国内ではまだ黎明期(れいめいき)で、

メリットばかりでなくデメリットもある状況ですが、

うまく利用すれば、自分の健康管理に役立てることができます。

 

もし遺伝子のレベルでの健康管理に興味があれば、

たとえばまずは「ダイエット」「スキンケア」など特定の項目に限定した

廉価なパッケージなどで、ご自身の遺伝的な体質を把握してみるのは

いかがでしょうか?

普段は全く考えてもみなかった自分の気質に気づくことがあるかも

しれませんよ。

 


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