今注目の子どもの表現力を高める教育法|レッジョ・エミリア アプローチとは

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Sawa

フリーライター。医療・福祉分野での執筆・編集経験10年以上。一般誌やビッグイシューなど社会問題系の仕事も。ライフワークは子どもに関すること全般。英国でAMI国際モンテッソーリ教師資格を取得。保育士。ピースボート2回乗船を含めヨーロッパ・アフリカなど50か国訪問。ホテル・民泊・シェアハウスに居住。


イタリアの都市レッジョ・エミリアで行われている公教育は、子どもの感性や思考力を高めるといわれています。

 

世界中でさまざまな教育が行われていますが、

都市単位で1つの教育法を実践しているというのはとても珍しい例。

 

地域住民が自然なかたちで参加していることやアート性の高さなど、

レッジョ・エミリアの特徴をまとめてみました。

 

地域性が生きる教育

現在、北イタリアの都市レッジョ・エミリアで行われている教育は、

第二次世界大戦の終戦後、都市が復興していくなかで生まれました。

 

1963年、教師のローリス・マラグッツィは、

レッジョ・エミリア市と協力して公立の幼児教育施設をつくります。

その後、市内には同様の施設が増えていきました。

 

そのなかで実践されてきた教育が注目され、いまでは世界中で取り入れられています。

それがレッジョ・エミリア・アプローチです。

 

「教師が生徒を教える」という上下のつながりではなく、

教育の場は子ども・教師・保護者の三者共同によって成り立っている

というのがレッジョ・エミリアの考え方。

 

加えて、地域住民が参画するため地域性が反映されるという点が大きな特徴です。

レッジョ・エミリアの校内にはピアッツァ(広場)があり、

生徒たちはもちろん、地域の人が集うことができる場となっています。

 

レッジョ・エミリアにおいて、学校は地域から隔絶された施設ではなく、

人々が自由に集まって交流できる社交場なのです。

 

アート性の高さ

アート的な要素が強いことも、レッジョ・エミリアの特徴のひとつです。

校内には芸術活動に使われるアトリエがあり、さらに各クラスにも小さなアトリエが用意されています。

 

そのアート活動を支えているのは、アトリエリスタと呼ばれる美術教師。

アトリエリスタは学校に1人ではなく、クラスごとに配置されています。

これを聞いただけでも、レッジョ・エミリアがアートをとても重要視していることがわかりますね。

 

アトリエには様々な素材が並べられています。

小石や葉っぱ、小枝、木の実、貝がらなど自然のものから、

カラーペーパーや包装紙などいろいろな種類の紙、

リボンやお菓子の包み紙など暮らしの中にあるもの…と実にさまざま。

子どもはそれらの素材を自由に使ってアートワークをします。

 

そういった活動を通じ、子どもたちは感性を高め、表現力を伸ばしていきます。

それをサポートする役割を担うのがアトリエリスタです。

 

ドキュメンテーションによる振り返り

レッジョ・エミリアでは、子どもたちは身近なところからテーマを見つけ、

そのテーマを掘り下げるグループ活動をします。

協調性、自主性、コミュニケーション能力などをのばす、長期にわたるプロジェクト活動です。

 

プロジェクトは子ども主導で行われ、教師はその活動を記録していきます

 

レッジョ・エミリアでは、イベントの記念や思い出のために記録をとるのではなく、

ドキュメンテーションと呼ばれる、活動の一部始終をもらさず記録に残し、

最終的に文章だけでなく写真や映像などを使って展示する目的として記録をとっています。

 

こうすることによって、子ども自身が自分たちの活動を振り返り次に生かすことができます。

 

また、展示は保護者や地域住民に対しても公開され、子どもの活動は地域社会で共有されます。

どんなことをやっているのかを知っている大人は、

子どもたちの調査・研究にも自然とかかわることができますよね。

 

モンテッソーリ教育との共通点

以前、レッジョ・エミリア・アプローチを学んだ保育士さんのプログラムに参加したことがあるのですが、

子どもが自由にのびのびとアートワークに取り組む姿はとても素敵でした。

 

レッジョ・エミリアは、同じく幼児教育法として知られる

“モンテッソーリ教育との違い”というのが、しばしば取り上げられます。

 

実は、モンテッソーリでも地域性というのを意識しています。

モンテッソーリでは「人間は自分がおかれている環境に適応する種」であることを学びます。

 

「言語」がよい例で、赤ちゃんは世界中のどこで生まれても、

周囲の大人が話している言語を話すようになりますよね。

日本人の遺伝子があると日本語を話す、というわけではありません。

 

自分が住んでいる地域の言語や生活習慣を身につけていくことで、本人にとってそこが居心地のよい場所になっていくのです。

 

モンテッソーリではそのことを環境と言うことを好みます。

アートや自然の恵みなどは、子どもたちの周りにある環境をかたちづくる大事なもの。

アトリエとは呼ばないまでも、クラスにはアートのコーナーも必ずあります。

 

地域ぐるみで子どもの教育を考える仕組み

地域ぐるみで子どもを育てるレッジョ・エミリアの特徴を簡単に紹介しました。

昨今、地域のつながりがネガティブにとらえられてしまう事件なども少なくありません。

今回紹介した教育法を参考に、教育と地域のかかわりを改めて考えるのもよいかもしれません。

 

小さいお子さんとかかわる際には、レッジョ・エミリア・アプローチの要素を取り入れてみてはいかがでしょうか。

 

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