オンライン新時代においての「人とのつながり方」とは?

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外山ゆひら

フリーライター。 哲学や心理学、芸術文化の分野に関心が高く、対人関係やコミュニケーション、生き方に関する記事を中心に寄稿。OTEKOMACHIの連載『恋活小町』を2012年より執筆中。 産業カウンセラー・心理相談員資格有。


今回のコロナ禍で、公私ともにオンラインで他者と関わる機会が急増し、

「必要なときにだけ人と関わること」が可能になり、

「つきあいたい人と、必要なだけつながれる暮らし」は意外に気楽だ、

新時代のあり方だ……と評する声も聞かれます。

しかし一方で、オンラインの人づきあい特有の懸念点も。

 

「つきあう相手を選べる自由は、自分がつきあう相手として

選ばれないかもしれない不安と表裏一体の自由」(※1)

という専門家の指摘にもあるように、

私たちは「つながりたくない人とつながらなくていい自由」を得た代わりに、

「つながりたくてもつながれない寂しさや孤立感」

も受け入れなければならなくなった……という見方もできます。

 

特に今回のコロナ禍では、

強制的に「人づきあい選択の自由と孤独」がもたらされているため、

老若男女を問わず、この状況にうまく適応しきれないでいる人、

人とのつながりを失って寂しさやつらさを感じている人、

それを誰にも相談できないでいる人も増えていると推測できます。

この点については、社会全体で少し温かい目をもって、

注視・配慮しあっていく必要があるのかもしれません。

 

産業カウンセラーである筆者が、

オンラインでも良好な人間関係を築区やり方を紹介します。

 (※1)『つながりをリノベーションする時代』(田所承己・菅野博史 編/弘文堂発行)第一部「ソーシャルメディアと流動化する人間関係」(吉野ヒロ子著)より

 

 私たちが「人とのつながり」から得ているもの

 そもそも、私たちは「人とのつながり」から、

どのようなものを得ているのでしょうか。

 

まず挙げられるのが、「感情の共有」

愛情や信頼、喜怒哀楽の感情を分け合ったり、

共感しあえたりすることは、他者との関わりで得られる

最大の恩恵とも言えます。

互いを理解しあうなかでは褒めたり、

認めたり、感謝したりする機会も生まれ、

人生への満足感や自己肯定感を高めあうこと」も可能です。

 

また意外と見逃せないのが、「有益な情報交換ができること」です。

人づきあいが減ると、他者から見た視点や有益な情報が得にくくなり、

自分の視野や世界が狭まったような感じがしますよね。

さらに「モノやお金の援助、身体的なサポート」なども、

人づきあいを通じて得られるものだと言えるでしょう。

 

もちろん、人と関わるなかでは、批判・対立・プレッシャーなどに晒されたり、

不快感や自己無力感などのネガティブな感情が生まれたりすることもあります。

しかし、それらの可能性を差し引いても、

上記のようなメリットをまったく得ずに生きていける…

という人は極めて少数ではないでしょうか。

 

人とのつながりが少なくなると、上記のような利点を得にくくなることに加え、

他者に影響を与えられないために、「自己存在価値への不安や揺らぎ」が生じることも。

何気ない交流から生まれる刺激もなくなり、「アイデアの創出機会」が減少したり、

チームでの協働による「大きな成果」を生み出せなくなったり…

といった事態も考えられます。

 

こう考えてくると、多くの人にとって「人とつながりが減ること」には、

なんらかのデメリットがあると推測できます。 

 

「オンラインでの人づきあい」は、対面と何が違うのか

 続いて、オンラインでの人づきあいが、対面での場合と

どのような点で異なるのかを見ていきましょう。

 

前章で挙げたもののうち、“絶対に”対面でしか得られないのは、

身体的サポートくらいです。

オンラインは情報や意見の交換にも適した場所ですし、

感情の共有も問題なくできます。

金銭やモノの援助に関するサービスもありますし、

相手を褒めたり、成果を認めあったり、ということも可能ですよね。

 

さりながら、「つながりの深さ」という点においては、

対面での人づきあいに及ばない可能性がありそうです。

 

英国のソーシャルメディア利用者を対象にしたある

調査論文(※2)の著者によれば、

「実際に機能する友達として関係を保つためには

ある程度の時間的労力を割く必要があるが、

そのために使える時間には誰しも限りがある」と言及しています。

 

ここで注目したいのは、実際に“機能する友だち”との関係を保つためには、

時間的労力を割く必要があるという点です。

 

オンラインの人づきあいは、対面よりも時間的な労力や費用をかけずに済み、

時間的にも経済的にも効率がいいですよね。

ただし、親しい間柄でない限り

「なんとなく無駄な時間を一緒に過ごすこと」はできにくい。

浅い関係の相手には「時間的労力」を割くことができないため、

本当に困ったときに助けあえるような深い関係をゼロから築くには、

オンラインは適さないツールとも考えられます。

端的に言うならば、「人とのつながりを深めていきにくい」点が、

オンラインでの人づきあいの最大のデメリットなのかもしれません。

 

まとめると、「オンラインの人づきあい」には、

・もともと深い関係を築けている人や組織との関係性には、急場の影響は及びにくい
・情報交換や意見交換を目的とした人づきあいには、特段の支障はない 

ものの、反面、

・新しい環境に入りたての人や知り合って間もない関係には影響が大きく、疎遠になりやすい
・機能する友だちや心の通いあう関係など、深いつながりを構築していきたい人にとっては、
 その期待や願望を満たしづらい

 …といった特性があると言えそうです。

  (※2)『つながりと健康格差』(村山洋史著/ポプラ社発行) Dunber RIM. Do online social media cut through the constraints that limit the size of offline social networks? Royal Society Open Science 2016; 3: 150292

 

今状況下で、心地よい「人とのつながり」を保っていくには

 さて、オンラインで他者とつながった際には、

必ず最後につながりを「切る」瞬間がありますが、

皆さんはその瞬間、どんな感情を覚えますか?

 

「切った後にホッとする、どっと疲れる」

という声も思いのほか聞かれます。

確かに、ひとりのモードからいきなり対面コミュニーションが始まると、

心の緊張感や参加者との距離感をうまく保てず、疲弊してしまうことも。

対面時のように心構えができる移動時間や前置きの時間もないため、

場のノリや雰囲気も作りづらいです。

 

 ウェブ会議等でこうした緊張感や気遣いにストレスを感じると、

プライベートでは「オンラインでの人づきあい」に

消極的になってしまう人もいるようです。

 

しかし、まだまだ長く続きそうなこの状況下で、

人とのつながりが減り続けると、前述のような、

ネガティブな影響が及ぶことも考えられます。

オンラインでも適度に人とつながり、心身を健やかに保っていくためには、

どうすればいいのでしょうか。

 

心理学者・名取琢自氏は『心理療法と現代社会』(※3)

のなかで、携帯電話を例に挙げ、

「『切る』自由度の高さは、これまで『つながって』しまっていた人々に、

より能動的に『切る』『つながる』機会をもたらしているのではないだろうか」

「これまで以上に、主体的な関わりを自分から作っていく能動性が

問われているのかもしれない」

と興味深い考察を述べています。

 

確かに「なんとなくその場にいること、集まること」

でのコミュニケーション機会が激減している今、

「能動的に切る・つながる」機会は増えていますよね。

これからの時代を生き抜くにあたっては、

自分から上手につながり、かつ上手につながりを切ることもできる

マインドとスキル

を身につけていくことが有効なのかもしれません。

 

人間関係を良好に保つための具体的なやり方

では具体的にはどうすればよいのか。5つの方法を紹介します。

(a)オンラインだからこそ、効率主義になりすぎない。関係のない雑談や前置きの時間も、意識的に設けるようにする。

(b)「自分は今、人づきあいで得られるプラス面を求めて、主体的につながっているんだ」という意識を持ち、他者とつながれる時間を楽しむ。

(c)主体的につながる姿勢は大切にしつつも、オンラインでのつきあいに不慣れな人やストレスを感じている人もいることは心得ておく。

 (d)お互いの「つながる自由、切る自由」を尊重しあう。うまくコミュニケーションができなかったとき、期待どおりにつながれなかったときにもあまり落胆しない。

 (e)関係を深めたい相手や、深める必要がある人や組織に対しては、「あえて手間をかけ、工夫して会うこと」も大事にする。目的に応じて、対面とオンラインを使い分ける。

 

上記のような点を意識しながら、人とつながる機会を持っていければと思うこの頃です。

これからの人づきあいを考える皆さんのご参考になれば幸いです。

(※3)『心理療法と現代社会』(岩波書店発行/総編集 河合隼雄)

 

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